はれのひ事件を二度と起こさないために
成人式当日に多くの新成人が晴着を着ることが出来ず途方に暮れた、はれのひ事件は、本当にショッキングなものでした。しかし再成人式での感動的なシーンなど、私たちきものに携わる者の想像を超えたうねりとなったことも事実です。振袖はきものに携わる者だけでなく、日本の女性、そしてその家族にとって、本当に大きな意味を持っていたのです。
私たち「つくりべの会」には
1. 各産地相互の交流、情報交換、研鑽
2. つくりべの立場を踏まえ、モノを売る立場、買う立場を理解し、モノづくりに生かす
3. 後継経営者、技術者の育成に努め、つくり手の参入を促し産地活性化を図る
ために、米沢、桐生、結城、東京、十日町、小千谷、浜松、加賀、丹後、京友禅、西陣、博多、久留米、鹿児島、奄美、沖縄の16産地・220名が参加しています。
私たち「つくりべ」にとって小売業は、消費者との架け橋の役割を果たしていただいていると思います。今回の事件は、その架け橋が見かけはきれいでも不完全で危険な状態であったために、多くの方が被害にあわれた、と言えると思います。
経済産業省 和装振興協議会において、「和装の持続的発展のための商慣行の在り方について」という「17条の指針」が採択され公開されました。きもの業界が抱える独特の商慣行、「商品は委託仕入れ、支払いを延勘や長い手形で遅らせる」「販売も問屋、メーカーの人員に依存する」から生じた、いわば「モノ貸せ、金貸せ、人貸せ」によって、自分自身は信用も蓄積も無い危険な業者が商売を始められ、見かけ上立派に成立してしまう。きものを消費者に伝える社会的使命を自覚した小売業者ではなく、儲かるから、いわば金儲けの道具としてきものを扱う業者が一部に存在してしまいました。
私たちは今回のような「事件」が二度と起こることがないよう努める義務があると確信しています。そのためには「17条の指針」に盛り込まれたそれぞれを今こそ着実に実行しなければなりません。その先にこそ、消費者の方が安心・満足してきものを買うことができる「きもの市場」があるのではないでしょうか。
私たちは「いつわりのないモノづくりをさせてくださいと毎日願う」という先人の言葉に深い感銘を受け、肝に銘じています。
「いつわりないモノづくり」 「いつわりのない取引」 「いつわりのない販売」
これらがあれば今回のような「事件」は決して起こらなかったはずです。
私たち産地が憂い無くモノづくりができ、お客様が安心・満足できる「きもの市場」を実現するため、少しでも確実に前へ進みたいと強く決意しています。そしてそのような決意をほかの立場の方々と、対立するのではなく、共有していきたいと考えています。
(以上)